【図説 台湾都市物語】後藤 治,王 惠君,二村 悟 著
2012年の冬ころ、不思議な体験をしました。
頭蓋骨の上半分がぱかりと外れたような、のび太の机の引き出しを開けてタイムマシンに乗り込んだ瞬間のような浮遊感。
橋頭砂糖工場跡地の一角で、異空間に落ちてしまったようにぼーっとしておりました。
一時間もそこにいたような気がしますが、本当のところ10分ほどだったのかもしれません。
周りの音も聞こえず、人もいない、ただ建物と空と、風に揺れる草花だけ。あ、あと私。
胸がきゅうううっと締め付けられて苦しいような、もわっとした空気に浮かされて心地いいような、変な感覚。
「今度はフイルムカメラで撮ろう」と頭で繰り返し考えていました。
実際、橋頭にその後何度も通っていますが、毎回新しい発見がある。広い敷地、改装中、ということもありますが、四季を通して色も空気も変わります。
他にもそんな浮遊感のある場所があるだろう、とこの本を手に取り、高雄ではほぼ行き尽くしましたが、撮影時とだいぶ趣きが違っていたり、立ち入り不自由になっていたりするものも多く、貴重な本の一つになりつつあります。
学術としての歴史、建築物、の見解がよくわかって、不勉強な私にはぴったりでした。
今は、ここには載っている建造物の付近をうろうろして、新たな浮遊感を探しています。